映画記録(海獣の子供)

原作未読です。映画館の予告だけ見ていいなと思ったので見にいきました。
ネタバレがないこともないですが読んでも何もわからないと思います。

 

音がすごくいい。TOHOのふつうのスクリーンで見たんだけどそれでも体の内側に響いてくるような澄みきった音。
セミの鳴き声、足音、風の音、潮騒の音、雨の音、嵐の音、海中の音、鯨の歌声。聴覚から感情を注ぎ込まれる感じ。
大きくて低い音って内臓に響くじゃないですか。作中では鯨の歌声がわりと大事なキーになっていて、それが主人公の中にわっと入ってくるシーンがあるんだけど、それが私の中にも入ってくる気がして、それがおそろしくてぞっとするような感覚もあったんだけれど同時にすごく心地良いんですよね。
そして合間に挟まる久石譲の美しい音楽とエンドロールの米津玄師の主題歌で、耳から心臓をつかまれた気がするくらいすばらしかった。映画館で見てよかったと心から思いました。

映像もとても良くて、私は夏と海が好きなのでもう視覚と聴覚だけで幸せ。
途中でどう考えても正気じゃない映像が挟まる(褒め言葉)。私はこういうものに浸るのが大好きなのでたまらなかった。本当に俄然好きだ…。
「おそろしい」と「うつくしい」が背中合わせになっていた。

話の内容はなんといえばいいのか、言葉であらわすのは難しいですね。
ひとことで言えば海の中で少女から宇宙がうまれたという感じなんですけど……。
謎の勢力(海外の軍人ぽかった)がなぜ出てきたのか、謎のおばあちゃんや髪の長い美しい青年は一体なんだったのか、正直なにもわかりません。海獣の子供たちを巡るさまざまな思惑があったという事実だけ理解していればいいのかもしれない。物語の中心はあくまで子どもたちが何を見て何を感じてどうなったかというところだったと思うので。
原作の漫画は未読なんですけど、風の谷のナウシカの映画が原作のほんの一部にすぎなかったように、もしかしたらものすごく壮大な物語があるのかもしれない。原作読んでみようと思います。

「宇宙は人間に似ている」(人間は宇宙に、だったかも)、「見つけてほしいから光るんだ」、印象に残った言葉。
不器用で自分の思いをうまく言葉で伝えられずに苦しむ主人公が、言葉の必要ない海の世界で生きている少年たちとふれあいながら、一時はまちがいなくあちら側の世界に行っていたんだけど、それでも元の世界で「わたし」として生きることを決めた結末がとてもよかったです。たぶんだけど、うまれたばかりの赤ん坊のへその緒を彼女が切ったところ、あれが彼女の答えだったのかなと思う。母親という海から切り離されて地上で生きること。

人間の世界なんてやめちゃいなよって私は思ったんだけど。うまれおちた世界で生きることを選んだ彼女はとても勇敢だし、素敵だなあということもまた思ったのだった。

大雨の日に見たので(この選択はとてもよかった)、次は晴れた夏の日に見にいきたいです。